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2007年8月の記事

2007年8月30日 (木)

0070  156のエンジン~その21

V6エンジン/ ⑦

V6_single_valveアルファV6のSOHC機構ですが、これは各バンク1本、両ヘッド合わせて2本のカムシャフトをオフセット配置し、2個のバルブの片方をプッシュロッド駆動するというもので、SOHCとOHVのいいとこ取りを目指したものです。

Vバンクは60度の狭角構成、吸気バルブは相対するように内側にセットされカムシャフトが直接リフトアップします。
一方、別にプロフィール設定された排気用のカム山が、プッシュロッドとロッカーアームを介して排気バルブをリフトアップさせるという複雑な構造が特徴です。
この方式の利点は何よりも、シングルカムながら点火プラグのセンター配置が可能ということ。
ボアセンター上にカムシャフトが配置される通常の形式ではこれが難しくなるためのアイデアと言われています。

当時は、ビッグバルブにより吸排気量を増大させ、半球形のコンパクトな燃焼室でガスを圧縮、適正なスワールを発生させたところをセンタープラグで一気に燃焼させる手法が理想でしたから、設計上の狙いとしては的を得ていたと言えます。
ヘッドの重さを嫌ってSOHCとしながらもパワーの両立を目指したアルファ流の選択だったかも知れません。


写真 【アルファV6独特の複雑なSOHC機構】   

  

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2007年8月28日 (火)

0069  156のエンジン~その20

V6エンジン/ ⑥

V6を開発するにあたってまずアルファに課せられた課題は、アルファの代名詞とも言えるDOHCというヘッド形式の見直しでした。
今までの直列4気筒に対し、V型では両バンク別にカムシャフトを設ける必要があり、DOHCのままでは頭の重さが問題となりました。
大型セダンのセイはともかく、追って搭載予定のアルフェッタ(GTV6)では運動性能に影響を与える可能性は大きく、参戦予定のツーリングカーレース(FIAグループA)に向けて何かしらの軽量化が検討されたようです。

そこでこのV6は非常に凝った手法のSOHC形式にチャレンジします。
そのレイアウトには理由がありましたが、DOHCを捨ててまでこだわった末に完成した機構はかなり特殊なものでした。

American_v6_ohvちなみにアメリカ車では実質V8のスケールダウン版としてのV6が数多く存在しましたが、形式はOHV、材質もスチールブロックでした。
そんな中にあってアルファV6はSOHC+材質をオールアルミ製とし、軽量化へ執念を燃やします。

加えてカムシャフトは内側配置されマスの集中化と両側への張出しを抑えることに成功、バルブ狭角も37度と効率に優れたコンパクトな燃焼室を形成し、ヘッドの小型化に一役買っています。
結果、このV6は非常に小型軽量なエンジンとして仕上がったのです。


写真 【典型的なOHV式 アメリカンV6 (フォード製)】 

  

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2007年8月25日 (土)

0068  156のエンジン~その19

V6エンジン/ ⑤

Montreal 当時のアルファは1970年に発売の『モントリオール』で既にV型8気筒を経験しています。
これはレースカー『ティーポ33』のデチューン版とも言われ、市販化にあたり排気量は2500ccに拡大されますが DOHC、90°V8という同仕様でした。
搭載されたボディーはベルトーネ製、(カウンタックで有名な)かのマルチェロ・ガンディーニの作品と言われています。
シャーシはジュリアクーペからの流用で、これは前後のオーバーハングの長さに見てとれます。
足回りはGT系を移植、性能面を見ると当時流行のスーパーカー軍団には一歩届かない印象も受けますが、高速安定性の優れた上質なGTカーであったと聞いています。

このV8、発表は1967年であったことから、V6開発が始まった頃には存在したことになりますが、Kawが調べた限りではV8がV6開発に直接何らかの影響を与えたかは不明です。
しかし先に挙げたブッソの存在とともに、高性能V型を開発する充分なノウハウがアルファに備わっていたことは確かでしょう。
幸い当時のアルファはジュリアシリーズのヒットやレースでの活躍を受け、新型エンジンに対する充分な投資が可能でした。
運が味方した部分もありますが、手間暇かけた基本設計の秀逸さはV6ユニットを長寿に導いた要因のひとつでもあります。


写真 【アルファロメオ モントリオール(V型8気筒)】   
   

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2007年8月23日 (木)

0067  156のエンジン~その18

V6エンジン/ ④

Giuseppe_busso開発の主任技術者はかのジュゼッペ・ブッソ、特にアルファV6ファンには忘れられない名前でしょう。

彼は1913年トリノ生まれ、世界大戦時の兵役を終えいくつかの企業を渡り歩いた後、1977年までアルファに在籍し、主に技術部門の統括をしていました。
一説ではアルファに1948年から入ったとされますが、実際は1937年にフィアットの航空機部門に入社、その後1939年にアルファ入りしたようです。

彼はエンジンのみならずメカニカルコンポーネンツ全般に精通しており、その守備範囲はかなり広いものだったと言われています。
かのアルファTZの開発にも積極的で、メカどころかボディーの空力まで提言していたと噂されますから、その力量の大きさが想像出来ますね。

それもその筈、ブッソは1946年にアルファから出向という形でフェラーリへ赴き、125スポーツや166SCなどを開発した経歴を持っています。
すなわちエンジニアとしては超一流、TZとは前後しますが60年代には元フェラーリのエンジニア、アウトデルタを率いるカルロ・キティーと共にTipo33/2の開発に携わっています。

面白いことに、166SCでは当時150psという優れた性能を2リッターV12型という形式で、Tipo33/2では2リッターV8で270ps(公道版のストラダーレはデチューンされ230ps)を達成しています。
もちろんジュリエッタ搭載の1300ccアルミ製DOHCユニットに代表されるように他形式エンジンにも明るかった彼ですが、アルファV6を生み出すにあたって『V型のスペシャリスト』であったことは非常に有利だったと想像できます。

残念なことに、ブッソは昨年(2006年)その生涯を終えました。
彼の葬儀は1月7日土曜日、アレーゼにあるサン・ピエトロとパウロの教会でしめやかに行われたそうです。


写真 【アルファV6生みの親、故ジュゼッペ・ブッソ】

  

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2007年8月21日 (火)

0066  156のエンジン~その17

V6エンジン/ ③

2600_berlina アルファにとって6気筒エンジン自体は戦前から名作が並んでおり、特に珍しいことではありません。
しかし形式はすべて直列型でした。
1962年、久々に2600ベルリーナで復活した6気筒も直列型、もちろん出力特性や回転バランスにおいて好ましいパフォーマンスを発揮し、シングルキャブレターにもかかわらず当時としてはトップクラスの132psという出力を得て顧客の高級志向に応えました。

ただしスポーティーかつ実用的な箱型車を真骨頂としていた当時のアルファにとって直列ゆえの全長は快適な車内空間の構築にはマイナス要因でした。
また高級モデルとして位置づけた6気筒の購買層がまだ少数だったこともあり、台数はアルファの思惑通りほど伸びなかったと聞いています。

68年、2600の生産を終了するとアルファにのラインナップは4気筒のみになり、直6に変わる新型エンジンへの期待はさらに高まります。
各メーカーがこぞって参加していた市販車ベースのツーリングカーレースでの使用は後々回避できない課題になりましたし、かといってそれだけの新型車リリースは現実的でありません。
欲しいのは直4クラスのコンパクトさと直6並みの回転バランス・・・導き出された答えはV型6気筒でした。


Special Thanks !!

2600 Berlina の写真を探すうち素敵なサイトに出会いました(^^)。

  『BEAUTIFUL CARS OF THE ’60s』
  http://blog.goo.ne.jp/koyapop/

モノクロを中心とした Koyapop さん撮影のオリジナル写真が、惜しげもなく満載されたブログです。
車好きならずともハッと目を奪われる作品の数々・・・添えられたコメントからカーデザインへ造詣の深さがうかがえます。
現代にレストアされた車体と違う、当時そのままの風景と’60s カーの輝き! 是非ご覧下さい。

今回の写真はKoyapop さんから特別に御許可をいただき掲載させていただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます~ありがとうございました!!


写真 【アルファ最後の直6 2600 ベルリーナ(直列6気筒)】
    ※ Koyapop さんから御提供いただきました!  
  

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2007年8月18日 (土)

0065  156のエンジン~その16

V6エンジン/ ②

6気筒を意味する『セイ(6)』に搭載されたことから、いかにもアッパークラス向けの高級ユニットとして誕生したように思えるこのV6エンジン。
実は開発当初からレースを目論んだ設計であったことは後々明らかになります。

皆さんご存知のように、市販車にもレースからフィードバックした技術を積極的に採用するのはアルファの特徴でした。
62年発表のジュリアに至っては、DOHCヘッド+5速ミッションにディスクブレーキを搭載、大ヒットとなります。
何せ他社が、OHV、4速、ドラムブレーキ、の時代でしたから差は歴然、ジュリア系はレースシーンでも圧倒的な強さを見せつけ、その高性能ぶりと活躍は目覚ましいものがありました。

70s_alfa_2000gtv_1 しかしスープアップを繰り返しながら発展した結果、68年の1750GTVでブロック容量の限界が見えてきます。
シリーズの終わりを飾る2000GTVは『ジュリア系最速』と言われる名車ですが、1962ccまで拡大されたエンジンは4気筒一体型のライナーを採用するなどの対応を迫られています。
もちろん新型の4気筒開発も考えられたようですが、他社も高性能エンジンの開発に乗り出す中、それを一歩リードするようなユニットが必要でした。

目指すは高性能かつ高級感があり、レース仕様にも耐えられる素性を持った発展性のあるエンジン・・・多気筒化は自然な流れだったと思われます。


写真 【ジュリアシリーズ最終型 2000GTV(4気筒)】 
  

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2007年8月11日 (土)

0064  156のエンジン~その15

V6エンジン ①

たぐい稀なフィーリングで他車オーナーですら魅了するアルファのV6エンジン。
シルキーシックスの愛称で呼ばれるBMW直列6気筒と並んで、名機の誉れ高い傑作ユニットです。
色々と表情を変えながら艶やかな音色と共に吹け上がる様は、まるで生命が宿るかのような錯覚に陥ります(^^)v
アルファオーナーさんの中にはこのサウンドにやられたという人も多いのではないでしょうか。

このエンジンはアルファにとって2600ベルリーナ以来の6気筒で、開発は1960年代の終わりからの数年間、中心となった技師はほんの数名程度であったと言われています。
当初はV型に限っていた訳ではなく、当時中心だった小型4気筒を超えるクラスを念頭に開発していました。
何パターンかの形式が検討される中、回転特性や小型化など求められるいくつかの要件を満たすV6が候補として残ったそうです。

Alfa_6 発表されたこのV6ユニットは、1979年アルファの大型セダン『6(セイ)』に搭載されデビュー、結果25年以上アルファのアッパークラスを基本構造そのままに支え続け、その過程で様々な展開を見せます。
2.5リッターという排気量はこのV6のオリジナル容量で、一連のバリエーションの中心となる存在です。
 

写真 【アルファV6 最初の搭載車 6(セイ)】
  

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2007年8月 9日 (木)

改装しました!

しばらく更新もなしでしたが、V6エンジンの資料を探しながら昔の記事に手を加えていました。
今までの記事の8割に手が加わっていますので、お暇な方は再度御高覧いただければ幸いです。
ブログ背景やリンクも衣替えして再出発です!(^^)

特にエクステリアの項目では、156開発初期のラフスケッチを交え加筆、デザイン推移について考察してみました。
同じく、156を形作る基本的な線の考察、155との比較、各デザイナーの側面、などに焦点を当て書いた次第です。

今後も何かしら新しい資料が見つかった場合は書き足していくつもりですが、現時点でエクステリアデザインの項目は(Kawの技量の範囲では)書き尽くした感があります。

何かお気づきの点ありましたらご指導よろしくお願いします。

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2007年8月 7日 (火)

0063  156のエンジン~その14

22jts アルファにおける2リッター級ユニットの歴史はまさに改良と熟成の歴史と言えます。
確かにパフォーマンスにおいて常にトップを保っていた訳ではありませんが、話が感覚的な項目に移れば最上級の形容詞で表現されるフィーリングが特徴でした。

ここ20年に限定しても、75版の8Vをルーツとして、155においてはアルミブロックに古典的フィーリングの8V版TS、スチールブロックならではの剛性感とパフォーマンスの16V-1st版TS、156では正常進化の16V-2nd版TS、そして最新デヴァイスとの融合JTS、これだけ各ユニットのキャラクターが明確でそれぞれ意義のあるエンジン系譜は他に類を見ません。

かなりの領域までコンピューターで解析し設計する最新型エンジンと一線を隔した味わいは、それに携わったエンジニア達の汗の結晶なのかも知れません。
156に搭載のこのJTSですが、2リッター版は方法論をそのままに排気量を2.2リッターまで拡大、基本ユニットをGM系列(オペル製)と移して現在に至っています。

新型が出るたびにその性能と質感に期待が寄せられるアルファユニット。
今後どんな展開になるのか眼が離せませんね(^^)


写真 【159搭載の新型2.2リッターJTSユニット】

  

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2007年8月 4日 (土)

0062  156のエンジン~その13

アルファ 2リッターエンジン比較 ④ TS16V-2ndJTS

16v2ndjtsJTS は見てお分かりの通り、パワー、トルク、共に綺麗なカーブが印象的で、この殆どが直噴方式による正確な燃料噴射から産み出されたものと思われます。
その形は16V-2nd に近いのですが、TS 3機種が何かしらと引き換えにそれぞれの性格を位置づけていたのに対し、JTS は各パートにおいて力強く別格の数値を叩き出しています。

特筆すべきは極めてフラットなトルク特性。
16V-2ndJTS はパワーでこそ10psの違いですが、トルクが全域で力強くなっていることが予想以上に効果を発揮しています。
3250rpmという低い回転域をピークとしながらも、それ以降の落ち込みは非常に緩やかです。
しかし味わいの面ではこれがメリハリ感の薄さとなり、エンジンフィールにおいてはマイナス要因のひとつとして考えられます。
よく指摘される1500rpm以下の細いトルク感ですが、確かにリーンバーン領域の落ち込みはあるものの遜色ない数値を保っています。
2500rpm付近から強く立ち上がるトルクとの比較がもたらした産物なのでしょうか、むしろ実際は従来より太くなっていることが分かります。

TSからJTSへ移行しても基本は同じロングストロークユニットのため、回転数の上限は実質TSと変化ありません。
そうなれば一発ごとの爆発力を上げるしか方法はなく、端的に言えば16V-2ndJTS の違いはトルクの違いです。
排ガス規制もユーロ4適合が課題だったこともあり、直噴化は考えられる最善の策だったと思われます。


写真 【TS16V-2nd と JTS の性能曲線比較】
  
  

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2007年8月 2日 (木)

0061  156のエンジン~その12

アルファ 2リッターエンジン比較 ③ TS16V-1st16V-2nd

16v1st16v2nd156搭載の 16V-2nd は、16V-1st の正常進化バージョンで、ピークトルクを低域寄りに、ピークパワーを高域寄りに振り分けて更なるパワーバンドの拡大を狙っています。
このタイプから採用された可変インテークシステムは高回転域でバイパスを通じインテークの実用長を短くするもので、その効果は充分に伺えます。
ただし2600rpm以下のトルクは16V-1st より僅かながら低い数値となっていて、総合的に見た場合やはり高回転型に振ったチューニングになっています。

面白いのは3800rpm~5400rpm付近で16V-1st16V-2nd の力関係がが逆転していることです。
エミッションコントロールもユーロ3に対応させた中での性能アップであることから、パワー&トルクこれら2つの要素を両立させたしわ寄せが色濃く出た部分なのかも知れません。

考えてみれば16バルブ化の際に継承されたツインスパークプラグも排ガス対応の目的になっていましたし、吸気側可変バルブタイミングゆえの大きいオーバーラップに合わせたものでした。
カムの油圧式タペットにも高速作動時の追従性で不足が目立ち始めており、さまざまなパートで回転数その他の上限が見え隠れし始めた時期でもあります。


写真 【TSユニット 16V-1st と 16V-2nd の性能曲線比較】
  

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